💰 終活における財産整理事例:金融資産編 — 「争族」を避けるための預貯金・投資の整理術
終活で財産整理を行う際、預貯金や株式、投資信託といった金融資産は、不動産と並び最も重要な項目です。一見分割しやすい現金や有価証券でも、相続発生時には口座が凍結されたり、名義変更や解約手続きが煩雑になったりすることで、残された家族に大きな「負担」や「争い」を生じさせることがあります。
ここでは、終活で金融資産を整理した具体的な「事例」を紹介し、家族が円満に、スムーズに財産を引き継ぐための賢い整理術を解説します。
1. 【事例1】分散した口座の集約と名義変更の簡素化:「口座の整理と遺言信託の活用」
背景:
Dさん(70代、子ども2人)は、複数の銀行や証券会社に口座を持っており、総資産の把握も困難**でした。
遺族が各金融機関で手続きを行う負担を心配**していました。
整理と対応:
口座の集約: 利用頻度の低い口座を解約し、主要な銀行と証券会社の各1口座に資産を集約しました。これにより、資産の総額が明確になり、管理が大幅に簡素化**されました。
遺言書の作成と遺言信託の利用: 遺言書を公正証書で作成し、金融資産の分け方を明確に指定しました。
遺言信託の契約: 信託銀行と遺言信託を契約し、自身の死後の相続手続き(預貯金の解約や名義変更、相続人への分配など)を信託銀行に一任する手配**をしました。
結果:
遺族は複数の金融機関を回ることなく、信託銀行とのやり取りだけで相続手続きを完了できました。
資産の総額が一目でわかる状態になり、遺産分割の話し合いもスムーズに進みました。
2. 【事例2】特定の財産を特定の家族に残す:「生命保険の活用」
背景:
Eさん(60代、妻と長男、長女)は、妻の老後の生活費を確実に確保したい一方で、長男には事業を継ぐための資金を渡したいと考えていました。
現金で残すと相続財産として分割の対象になり、妻への資金が減ることを懸念していました。
整理と対応:
受取人指定の生命保険: Eさんを被保険者とし、妻を保険金の受取人とする生命保険に加入しました。
保険金の特徴: 生命保険金は、原則として**「受取人固有の財産」となり、遺産分割の対象から外れる**(ただし特別な事情がある場合を除く)特性を活用。
遺言書での明確化: 遺言書には、長男への事業資金として現預金の大半を相続させる旨を記載し、妻には保険金が渡ることを付記しました。
結果:
Eさんの死後、生命保険金は迅速に妻に支払われ、生活の不安を解消できました。
長男も遺言書に従い事業資金を受け取ることができ、特定の目的に沿った財産の承継が実現しました。
3. 【事例3】デジタル資産の存在を伝える:「財産目録とエンディングノート」
背景:
Fさん(50代、単身)は、ネット銀行やネット証券、仮想通貨口座など、デジタルな金融資産を多く**持っていました。
紙の通帳がないため、自身に万が一のことがあった際に家族が口座の存在すら知らず、資産が埋もれてしまうリスクがありました。
整理と対応:
デジタル財産の棚卸し: 全てのネット口座や仮想通貨口座の名称とIDをリストアップし、財産目録を作成しました。(パスワードは記載**しない)
エンディングノートの活用: エンディングノートに「デジタル資産の保管場所**(例:銀行名と会員番号を記載したリストは〇〇の金庫に保管**)」を記載**しました。
連絡先の明確化: 各金融機関の相続に関する相談窓口の連絡先もリストに加えました。
結果:
Fさんの妹は、ノートに従いリストを発見し、速やかに各ネット金融機関に連絡して相続手続きを開始することができ**ました。
埋もれる可能性のあったデジタル資産を確実に引き継ぐことが可能**になりました。
まとめ:金融資産整理は「情報の集約と意思表示」が鍵
終活における金融資産の整理の目的は、「誰が何をどれだけ受け取るか」を明確にし**、手続きの煩雑さを減らすことです。
情報の集約: 預貯金や口座を集約し、財産目録を作成する。
意思の明確化: 遺言書や生命保険を活用して、誰に何を渡すかの意思を法的に明確にする。
これらの対策を早めに行うことで、残された家族の心の負担と事務的な負担を大幅に軽減し、「争族」を未然に防ぐ**ことができます。