🏠 終活における財産整理事例:不動産編 — 家族の負担を減らす「不動産」の賢い整理術
終活の一環としての財産整理において、不動産は最も複雑で重要な要素の一つです。不動産は現金と異なり、分割が難しく、維持管理の手間や税金の問題が常に伴うため、生前に整理をしておかないと、残された家族に大きな「争いの種」や「負担」を残してしまいかねません。
ここでは、終活で不動産を整理した具体的な事例をタイプ別に紹介し、家族が円満に、スムーズに財産を引き継ぐための賢い整理術を解説します。
1. 【事例1】自宅をめぐる相続争いを回避:「生前贈与と負担付贈与」
背景:
Aさん(70代、妻と長男夫婦)は、自宅(評価額が高いが、流動性が低い)を長男に継がせたいと考えていました。
しかし、長男には他に姉妹がおり、遺言書がないと法定相続分に従い、自宅を分割せざるを得ない可能性がありました。
整理と対応:
生前贈与の検討: 自宅の評価額が高く、多額の贈与税が発生する可能性があったため、税理士に相談。
「負担付贈与」の選択: Aさん夫婦の老後の生活費や介護の費用を長男が負担することを条件に、自宅を長男に贈与しました。
付帯条件: 贈与契約書に「Aさん夫婦が亡くなるまで、自宅に住み続ける****権利(使用貸借権など)を確保する」旨を明記**。
他の相続人への配慮: 長男が贈与を受けたことを姉妹に伝え**、長男が金銭で**「代償金」を支払う旨を合意し、公正証書で遺言書を作成しました。
結果:
自宅の承継者が明確になり、相続争いを回避。
長男が代償金を支払うことで、姉妹も納得し、円満な承継が実現しました。
2. 【事例2】賃貸アパートの管理負担と相続の簡素化:「売却と金銭化」
背景:
Bさん(80代、子どもは遠方に2人)は、都内に築古の賃貸アパートを所有していました。
家賃収入はあるものの、空室や修繕の手間が負担となり、相続人に管理の手間を残したくなかった**。
整理と対応:
アパートの売却: 不動産の価値が高騰している時期を見計らい、アパートを売却。
売却益の活用: 売却益の一部を生活費として確保し、残りの大部分を投資や現金に変えて管理しやすい状態**にしました。
遺言書での明確化: 売却して金銭化した財産について、子どもたちへの分割方法を遺言書に明確に記載しました。(例:「長男に〇〇円、次男に〇〇円」)
結果:
遠方に住む子どもたちに****管理の負担を残さず、簡単に分割できる現金として財産を残すことができました。
不動産の維持にかかる****固定資産税や修繕費の支払いが不要になりました。
3. 【事例3】共有名義の別荘の処分:「生前整理信託」
背景:
Cさん(70代)は、友人と共有名義で地方に別荘を所有していましたが、利用しなくなり売却も困難でした。
別荘の維持費(固定資産税など)が負担であり、相続人が共有名義の権利を引き継ぐことで、友人の相続人との間でトラブルになる可能性**がありました。
整理と対応:
民事信託(家族信託)の活用: 別荘の管理・処分を長男に託す「信託契約」を締結しました。(受託者:長男、委託者:Cさん)
信託契約の内容: 信託契約の中で、「Cさん死亡後、長男が別荘を売却し、売却益を相続人で分配する」という目的を設定しました。
友人と話し合い: 共有名義の友人とも協力し、両家で信託契約や売却の方針を確認**しました。
結果:
信託契約により、Cさんが亡くなった後も裁判所の手続きを経ることなく、長男が別荘を売却する権限をスムーズに得ることができました**。
相続人に複雑な共有の権利を残すことなく、最終的に金銭として分割することが可能になりました。
まとめ:不動産整理は「複雑さの解消」が鍵
終活における不動産の財産整理の目的は、不動産が持つ****「複雑さ」を解消し、残された家族が簡単に分割できる「金銭」に変えるか、承継者を明確に決める**ことにあります。
不動産整理を進めるにあたっては、税金(贈与税・相続税・譲渡所得税)の問題が必ず絡んでくるため、専門家(税理士、司法書士、不動産業者)と連携して計画的に進めることが不可欠です。家族と納得のいくまで話し合い、早めに対策を講じましょう。