📝終活における相続財産の評価方法:財産を正しく把握するために
⚖️プロローグ:なぜ相続財産の評価が必要なのか?
「終活」の一環として、ご自身の財産を整理し、相続人となるご家族に円滑に引き継ぐための準備は非常に重要です。この準備において、**「相続財産の評価」**は欠かせないステップです。
財産を正確に評価することで、相続税の申告が必要かどうかの判断や、遺産分割協議を公正に進めるための基礎情報となります。この記事では、主な相続財産である不動産、金融資産、その他の財産について、終活において知っておきたい基本的な評価方法を解説します。
🏠第1章:不動産(土地・建物)の評価方法
不動産は相続財産の大部分を占めることが多く、評価方法が複雑なため、特に注意が必要です。
1. 土地の評価方法
相続税を計算するための土地の評価額は、原則として「路線価方式」または「倍率方式」によって算出されます。
路線価方式(ろせんかほうしき)
対象エリア: 市街地や宅地が多い地域。
評価方法: 道路に面した土地の**1平方メートルあたりの評価額(路線価)**を基に、土地の面積や形状に応じて補正を加えて評価額を算出します。路線価は、国税庁の財産評価基準書(路線価図)で確認できます。
倍率方式(ばいりつほうしき)
対象エリア: 路線価が定められていない地域(主に郊外や農村部)。
評価方法: その土地の固定資産税評価額に、国税庁が定めた一定の倍率をかけて評価額を算出します。倍率も国税庁のホームページで確認できます。
2. 建物の評価方法
評価方法: 建物の評価額は、原則として固定資産税評価額と同額とされます。
確認方法: 毎年送付される固定資産税の納税通知書に記載されている「課税標準額」や「評価額」を確認しましょう。
💡ポイント
実際の市場価値(時価)と相続税評価額は異なります。相続税評価額は、時価よりも低くなることが多いのが一般的です。
💰第2章:金融資産の評価方法
金融資産は、評価が比較的容易ですが、評価する時点に注意が必要です。
1. 現金・預貯金
評価方法:
現金: 手元にあるそのままの金額。
預貯金: 相続発生日(原則として亡くなった日)時点の残高が評価額となります。
確認方法: 金融機関発行の残高証明書を取得して確認します。定期預金の場合は、解約した場合に受け取れる金額(元金+利息から税金を引いた額)で評価されます。
2. 有価証券(株式・投資信託など)
評価額は、相続発生日時点の価格で評価されますが、価格の変動が大きいため、以下のうち最も低い価格を選択できる特例があります。
上場株式
相続発生日(亡くなった日)の終値
相続発生日の月の毎日の終値の平均額
相続発生日の前月の毎日の終値の平均額
相続発生日の前々月の毎日の終値の平均額
上記のうち最も低い価格が評価額となります。
投資信託
相続発生日の基準価額が評価額となります。
3. 生命保険金・退職金
これらは厳密には民法上の相続財産ではありませんが、相続税の課税対象となる**「みなし相続財産」**として評価されます。
評価方法: 受け取った金額がそのまま評価額となります。ただし、非課税枠(生命保険金:500万円 × 法定相続人の数、退職金:500万円 × 法定相続人の数)が適用されます。
🎁第3章:その他の主な財産の評価方法
1. 自動車
評価方法: 同年式、同車種、同程度の走行距離の中古車の売買価格(時価)を参考にして評価します。中古車販売業者の査定額が参考になります。
2. 骨董品・美術品
評価方法: 専門家による鑑定評価額が評価額となります。高額なものや価値が判断しにくいものは、専門の業者に査定を依頼する必要があります。
3. 貸付金・受取手形など
評価方法: 額面金額が評価額となります。ただし、回収が困難なもの(債務者が破産しているなど)については、その回収不能見込み額を差し引いた金額で評価される場合があります。
💡エピローグ:評価で大切な「基準日」と「専門家への相談」
相続財産の評価で最も大切なのは、「相続発生日(原則として亡くなった日)」を基準にすることです。終活中に財産リストを作成する際も、その時点の時価や残高を記録しておくと、後々の評価作業がスムーズになります。
財産評価は、遺産分割や相続税額に直結するため、正確性が求められます。特に不動産や非上場株式など評価が難しい財産については、税理士や不動産鑑定士などの専門家に相談することを強くおすすめします。