土地の評価方法:目的別「一物四価」


土地には、主に以下の4つの公的な価格(これに「基準地価格」や「不動産鑑定評価額」を加えることもあります)があり、それぞれが異なる計算方法と利用目的を持っています。

評価額の名称主な利用目的評価基準・根拠公示価格との目安比率
1. 実勢価格(時価)売買、市場取引市場の需給バランス、取引事例公示価格の 110〜140% 程度
2. 公示価格(公示地価)公的な土地評価の基準不動産鑑定士の鑑定(国土交通省が公表)基準価格(100%
3. 相続税評価額(路線価)相続税、贈与税の計算国税庁(路線価図で公表)公示価格の 約80%
4. 固定資産税評価額固定資産税、不動産取得税の計算市区町村公示価格の 約70%

土地の評価額を算出する具体的な方式

税金計算のために「相続税評価額」や「固定資産税評価額」を出す際には、以下の2つの方式が用いられます。

1. 路線価方式(主に市街地)

  • 方法: 道路(路線)に面する$1\text{m}^2$あたりの標準的な宅地の価格(路線価)を基準とします。

  • 計算: その土地の形状(奥行き、間口の広さ、不整形など)に応じた補正率を路線価にかけて、評価額を算出します。

$$\text{評価額} = \text{路線価} \times \text{各種補正率} \times \text{土地の面積}$$

2. 倍率方式(主に郊外・農村部)

  • 方法: 路線価が定められていない地域で使われます。

  • 計算: 固定資産税評価額に、国税庁が定めた一定の倍率を乗じて評価額を算出します。

$$\text{評価額} = \text{固定資産税評価額} \times \text{評価倍率}$$

建物の評価方法:原価法が基本

建物は、時間の経過とともに価値が減少(減価)していくため、評価には主に**「原価法」**が用いられます。

1. 原価法(積算価格)

建物評価の最も基本となる考え方です。

  • 考え方: 評価対象の建物と**全く同じ建物を、評価時点の資材や工賃で新しく建て直す場合にかかる費用(再調達原価)**をまず算出します。

  • 減価修正: そこから、建物の**築年数に応じた老朽化や使用状況による価値の減少分(減価修正)**を差し引いて、現在の価値を求めます。

$$\text{建物の積算価格} = \text{再調達原価} - \text{減価修正額}$$

【主に利用される場面】

  • 固定資産税評価額の算定: 市町村(東京23区は都)がこの考え方を用いて評価額を決定します。

  • 担保評価: 金融機関が融資を行う際の担保価値を評価する際にも参考にされます。

2. 取引事例比較法

土地の評価でも使われますが、市場で実際に取引される建物の価格(実勢価格)を評価する際にも有効です。

  • 考え方: 構造、築年数、広さなどが類似した中古物件の実際の取引事例を集め、対象建物の個別的な条件(間取り、設備、状態など)を比較して補正し、価格を推定します。

3. 収益還元法

賃貸マンションやオフィスビルなどの投資用不動産の評価で主に使われる方法です。

  • 考え方: その不動産が**将来生み出すと期待される収益(家賃収入など)**を予測し、その収益を現在の価値に割り引く(還元する)ことで評価額を求めます。

  • 目的: 投資家がその物件を購入すべきかどうかを判断する際の指標となります。

土地と建物は一体として取引されることが多いため、実際の不動産鑑定評価では、これら複数の評価方法を組み合わせて、最終的な適正価格が決定されます。

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