遺産分割協議書の作成方法|失敗しない書き方と法的ポイントを徹底解説


相続手続きを進める中で必ず登場するのが「遺産分割協議書(いさんぶんかつきょうぎしょ)」です。
相続人全員で遺産をどう分けるかを決め、その内容を文書にまとめる重要な書類ですが、書き方を間違えると無効になる可能性もあります。

この記事では、専門家が実践している正しい作成手順・注意点・法的効力をわかりやすく解説します。
初めての方でも安心して作成できるよう、テンプレート形式の例文も紹介します。


遺産分割協議書とは?その役割と法的効力

● 遺産分割協議書とは

被相続人(亡くなった方)の財産を、相続人同士でどのように分けるかを話し合い、全員の合意内容を文書化したものです。
これがあることで、相続後のトラブルを防ぎ、法務局での名義変更や銀行口座の解約などがスムーズに行えます。

● 法的効力について

遺産分割協議書は、相続人全員の署名・押印がそろえば法的効力を持つ文書となります。
ただし、相続人の一部が欠けている場合や、署名・実印が不備の場合は無効になることがあるため注意が必要です。


遺産分割協議書の作成手順【5ステップ】

ステップ①:相続人の確定

まずは、誰が法定相続人かを確定します。
戸籍謄本・除籍謄本をたどって、配偶者・子・親・兄弟姉妹などの関係を明確化します。
この作業を怠ると、後で「知らない相続人がいた」というトラブルが発生することも。

ステップ②:遺産の全体を把握

不動産・預貯金・株式・保険金・車など、すべての財産をリスト化します。
負債(ローンや借入金)も含めて整理するのがポイントです。
財産目録を作成しておくと協議がスムーズに進みます。

ステップ③:分割内容を話し合う

相続人全員で集まり、各人がどの財産を取得するかを話し合います。
たとえば、

  • 長男が自宅不動産を取得

  • 長女が預貯金の○万円を取得

  • 次男が車を取得

といった形で、具体的な分け方を決めます。
この段階では、公平性・納得感・将来の関係性を意識することが大切です。

ステップ④:遺産分割協議書を作成

話し合いの内容を文書化します。
Wordや手書きでも構いませんが、誤字や表現のあいまいさを避けるためにパソコン作成が一般的です。
文面の基本構成は以下の通りです。


遺産分割協議書の書き方例(テンプレート)


遺産分割協議書

被相続人 ○○○○(令和○年○月○日死亡)の遺産について、相続人全員で協議した結果、以下の通り分割することに合意した。

第1条 相続財産の分割内容

  1. 不動産:東京都〇〇区〇〇町〇丁目〇番地の土地・建物
     → 相続人 長男 ○○○○ が取得する。

  2. 預貯金:〇〇銀行〇〇支店 普通預金(口座番号〇〇〇〇〇〇)
     → 相続人 長女 ○○○○ が取得する。

  3. 自動車(登録番号〇〇〇〇)
     → 相続人 次男 ○○○○ が取得する。

第2条 本協議により、他の相続人は一切の相続権を放棄する。

本協議の証として、本書を相続人全員が署名・押印し、各自1通ずつ保有する。

令和○年○月○日

相続人 住所:東京都〇〇区〇〇町〇丁目
    氏名:○○○○ 印

相続人 住所:東京都〇〇区〇〇町〇丁目
    氏名:○○○○ 印


※実印を押し、印鑑証明書を添付することを忘れずに!


遺産分割協議書を提出・使用する場面

  • 不動産の名義変更登記(法務局)

  • 預貯金・株式の相続手続き(銀行・証券会社)

  • 自動車や保険金の名義変更・解約手続き

これらの手続きで、相続人全員の同意を証明する資料として必要になります。


作成時の注意点とよくある失敗例

① 相続人全員の署名がない

→ 1人でも欠けると無効。海外在住者・未成年者も含めて必ず全員分をそろえる。

② 押印が認印やシャチハタ

→ 実印で押印し、印鑑証明書を添付すること。

③ 財産内容の記載ミス

→ 「住所地番」「口座番号」などを正確に記入。曖昧な記載はトラブルのもと。

④ 複数ページの場合

→ 綴じ印(契印)を押して改ざん防止を。


専門家に依頼した方がよいケース

  • 相続人が多く、話し合いがまとまらない

  • 不動産の評価や遺留分の扱いに不安がある

  • 相続税の申告が必要になりそう

こうした場合は、司法書士・税理士・行政書士に依頼すると確実です。
費用の目安は3万円〜10万円前後で、書類の法的効力を確実にすることができます。


まとめ|遺産分割協議書は「将来の安心」を守るための書類

遺産分割協議書は、単なる書類ではなく、家族の信頼関係を形にする大切な記録です。
正しく作成すれば、将来の相続トラブルを未然に防ぎ、相続手続きもスムーズに進みます。

手書きでも自作は可能ですが、少しでも不安がある場合は、専門家にチェックしてもらうのが安心です。
しっかりと準備を整えて、家族全員が納得できる円満な相続を実現しましょう。

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