終活で家族を安心させる!後悔しない「医療・介護」の意思決定ガイド
「終活」の中でも、最も勇気がいるけれど、最も家族の負担を軽くできるのが、医療と介護の希望を明確にしておくことです。
「もしも」の時に、あなたが意識を失っていたら、ご家族は「延命治療をするべきか、しないべきか」「自宅で介護するべきか、施設に入れるべきか」という重い決断を迫られます。その決断は、ご家族の心に大きな後悔や葛藤を残しかねません。
あなたの意思を明確に残すことは、ご自身が**「自分らしい最期」**を迎えるためだけでなく、残されるご家族に「安心」を贈るための準備です。さあ、一緒に「自分らしい未来」の設計図を描いていきましょう。
1. 終末期医療の希望を明確にする:「延命」と「尊厳」の選択
最も重要なのが、**「人生の最終段階」**における医療(終末期医療)の希望です。
この意思決定は「リビング・ウィル(生前の意思)」とも呼ばれ、エンディングノートや事前指示書に記載することで、ご家族や医療関係者にあなたの意思を伝えることができます。
1-1. 延命治療に関する意思表示
回復の見込みがないと医師に判断された場合、どのような医療を望むか、望まないかを具体的に考えます。
医療行為の項目 | 検討すべき意思 | 家族への影響 |
人工呼吸器 | 呼吸が自力でできなくなったとき、装着を希望するか、拒否するか | 一度装着すると外すのが難しい。家族が判断を求められるケースが多い。 |
人工栄養・水分補給 | 胃ろう(胃に直接栄養を送る)や点滴による栄養補給を希望するか、拒否するか | 栄養・水分補給の有無が、ご本人の状態と尊厳に直結する。 |
心肺蘇生(蘇生措置) | 心臓が停止した場合の心臓マッサージや電気ショックを希望するか、拒否するか | 蘇生後の生活の質(QOL)まで含めて考える必要がある。 |
【ポイント】
「回復の見込みがない場合、延命のためだけの治療は望まない」という尊厳死の意思を明確にしたい場合は、その旨をしっかりと記載しましょう。ただし、単なる延命処置の拒否だけでなく、「苦痛を取り除く緩和ケアは積極的に行ってほしい」という希望も忘れずに伝えておくことが大切です。
1-2. 誰に意思決定を託すか(代理人の指定)
あなたが判断能力を失ったとき、あなたの医療に関する意思を医師に伝える**信頼できる人(医療代理人)**を指定しておきましょう。
指定する人: 配偶者、お子様、親しい友人など、あなたの価値観を理解し、冷静に判断できる人。
伝えること: 代理人には、あなたの希望(延命の可否など)を日頃から具体的に話し合っておきましょう。
2. 介護に関する希望:「場所」と「人」を決める
医療の準備と並行して、将来介護が必要になった場合に**「どこで、誰に、どのように」**介護を受けたいかを考えておくことも重要です。
2-1. 介護を受ける「場所」の希望
介護の場所の希望は、ご家族の生活にも大きく影響します。
自宅(在宅介護): 住み慣れた環境で過ごしたい場合に選択。ご家族の負担が増える可能性があるため、訪問介護やデイサービスなどの外部サービスを積極的に利用する意思も伝えておく。
施設への入居: ご家族の負担を減らし、専門的なケアを受けたい場合に選択。特別養護老人ホーム(費用負担が少ない)や介護付き有料老人ホーム(サービスが充実)など、希望する施設の種類や入居の優先順位を具体的に調べておく。
その他: サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、グループホームなど、さまざまな選択肢があります。
2-2. 介護に関する具体的な意向
「どんな生活を送りたいか」という、あなたの**生活の質(QOL)**に関わる希望を伝えます。
意向の項目 | 記載すべき内容 | 家族へのメッセージ |
認知症になった場合 | どのようなケアを希望するか、家族にどこまで関わってほしいか | 認知症になっても自分らしくいられるための配慮(好きな音楽を聴く時間など)を具体的に書く。 |
経済的な備え | 介護費用の準備状況(預貯金、介護保険、年金など) | **「費用は心配しないでいい」**というメッセージは、ご家族の精神的なプレッテンを大きく減らす。 |
成年後見制度 | 判断能力が低下した場合に、財産管理や契約を任せたい人の希望 | **「もしもの時」**のお金の管理について、信頼できる人を指定しておく。 |
3. 準備を「実行」し「共有」するためのステップ
せっかく準備しても、ご家族に伝わっていなければ意味がありません。
ステップ1:かかりつけ医と**人生会議(ACP)**を行う
医療や介護の希望は、専門家と相談しながら決めるのが理想です。
かかりつけ医への相談: 延命治療の具体的な内容や、病状が進行した場合の予測などについて、担当の医師に相談してみましょう。
人生会議(ACP: アドバンス・ケア・プランニング): 家族や医療・介護の専門家を交えて、あなたの希望や価値観について話し合う機会を持つことです。**「誰かと一緒に考える」**ことで、より現実的で後悔のない選択ができます。
ステップ2:エンディングノートに手書きで残す
法的効力はありませんが、あなたの意思を伝える最強のツールです。
医療・介護のページは、特に丁寧に記入し、ご自身の気持ちや価値観を添えておくと、ご家族があなたの判断を尊重しやすくなります。
**「私らしく生ききるために、この選択をしました」**といったメッセージを添えることで、ご家族の精神的負担を和らげることができます。
ステップ3:保管場所と存在を家族に伝える
エンディングノートは、保管場所を家族に確実に伝え、定期的に内容を見直す習慣をつけましょう。気持ちは変わるものですから、その都度、ご家族と情報を更新・共有することが大切です。
「もしも」の時のために、あなたの**「意思」**というバトンを、元気なうちに確実に家族に渡しておきましょう。