認知症になったら、大切な財産はどう守る?後悔しないための管理方法


「もしも、大切な家族が認知症になったら、その人の財産はどうなるんだろう?」

「本人が自分で銀行の手続きもできなくなったら、困るのは誰?」

認知症は、誰にでも起こりうる病気です。もし、ご本人やご家族が認知症になってしまった場合、預貯金、不動産、有価証券などの財産管理は、ご本人の意思を尊重しつつ、適切に行う必要があります。

この記事では、認知症になった場合の財産管理について、利用できる制度や、どのような点に注意すべきかを分かりやすく解説します。

認知症で財産管理が難しくなる「これから」を考えて

認知症が進行すると、ご本人が自分で以下のような判断や手続きを行うことが難しくなります。

  • 預貯金の出し入れや振込

  • 不動産の売買や賃貸契約

  • 有価証券の売買

  • 各種サービスの契約や解約

  • 税金や公共料金の支払い

これらの財産管理ができなくなると、生活費の確保が困難になったり、財産が適切に管理されずに放置されたりするリスクがあります。また、悪質な第三者から財産を狙われる可能性もゼロではありません。

認知症になった場合の財産管理、主な3つの方法

認知症になった方の財産を守るための主な方法として、以下の3つが挙げられます。

  1. 成年後見制度(法定後見制度)

  2. 任意後見制度

  3. 家族信託(民事信託)

それぞれの制度について、詳しく見ていきましょう。

1. 成年後見制度(法定後見制度):家庭裁判所が選任する「後見人」に任せる

法定後見制度は、すでに認知症などで判断能力が低下してしまった方のために、家庭裁判所が「成年後見人」を選任する制度です。

  • どんな時に使う?

    • ご本人がすでに認知症などで判断能力を失っている、または著しく低下している場合。

    • あらかじめ後見人を指定する準備ができていなかった場合。

  • 誰が選ばれる?

    家庭裁判所が、ご本人やご家族の意向、財産状況などを考慮して、弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門職や、信頼できる親族などを成年後見人として選任します。

  • 後見人の権限

    成年後見人は、ご本人の法定代理人として、預貯金の管理、不動産の売買、身上監護(身上とは、衣食住、医療、介護などの生活全般のこと)など、ご本人の財産や身上に関する一切の法律行為を行うことができます。

  • メリット

    • 公的な制度であり、安心感がある。

    • 専門職が選任される場合、不正のリスクが低い。

    • ご本人の財産を法的に保護できる。

  • デメリット

    • 一度開始すると、ご本人の判断能力が回復しない限り、終了できない。

    • 後見人の身上監護や財産管理の報告義務があり、家庭裁判所への報告が必要。

    • 後見人への報酬が発生する。

    • ご本人の意思(「こんな風に使いたい」など)を、後見人の判断で実現できない場合がある。

2. 任意後見制度:元気なうちに「将来の後見人」を決めておく

任意後見制度は、判断能力のあるうちに、将来、認知症などになって判断能力が低下した場合に、誰に財産管理などを託したいかを自分で決めておく制度です。

  • どんな時に使う?

    • 将来、認知症になった時に、信頼できる人に財産管理を任せたいと考えている場合。

    • 「この人に財産管理は任せたくない」という人がいる場合。

  • どうやって始める?

    1. 任意後見契約の締結:公証役場で、公正証書を作成して「任意後見契約」を結びます。

    2. 家庭裁判所への申し立て:ご本人の判断能力が低下した時点で、家庭裁判所に任意後見監督人を選任してもらうための申し立てを行います。監督人が選任されることで、後見人の不正を防ぎます。

  • 後見人の権限

    任意後見人が、契約で定めた範囲(財産管理、身上監護など)について、ご本人を代理して契約や手続きを行うことができます。

  • メリット

    • 「誰に」「何を」委ねるかを自分で決められる。

    • 信頼できる家族や親族に任せやすい。

    • ご本人の意思を最大限に尊重しやすい。

  • デメリット

    • 判断能力が低下する前に契約を結ぶ必要がある。

    • 任意後見監督人の報酬が発生する。

    • 専門職(弁護士、司法書士など)に依頼する場合、専門家報酬が発生する。

3. 家族信託(民事信託):財産管理の「自由度」が高い

家族信託は、財産を託す人(委託者)が、信頼できる人(受託者)に財産を移し、その財産を「受益者(通常は委託者自身)」のために管理・運用・処分する契約です。

  • どんな時に使う?

    • ご本人が認知症になった場合だけでなく、病気や怪我で一時的に判断能力が低下した場合など、柔軟な財産管理をしたい場合。

    • 相続対策も兼ねて、財産管理のルールを細かく決めたい場合。

    • 「身上監護」までは任せられないが、財産管理だけは任せたい場合。

  • 制度の仕組み

    • 委託者:財産を預ける人(例:認知症になる前の本人)

    • 受託者:財産を管理・運用する人(例:配偶者、子)

    • 受益者:財産から生じる利益を受け取る人(例:委託者本人)

    • 信託契約:これらの関係や、財産の管理・処分方法などを定めた契約(公正証書で作成することが多い)

  • メリット

    • 財産管理のルールを、ご本人の意思に基づいて細かく柔軟に設定できる。

    • 成年後見制度よりも、ご本人の意思を反映させやすい。

    • 財産管理をスムーズに引き継げる。

    • 相続対策としても活用できる。

  • デメリット

    • 制度が比較的複雑で、専門家(弁護士、司法書士、信託銀行など)への相談・組成費用がかかる。

    • 受託者に一定の責任が生じる。

    • 信託した財産は、受託者の名義に変わる。

どのアプローチが最適か?

どの制度が最適かは、ご本人の状況、家族構成、財産の状況、そして将来の希望によって異なります。

  • すでに判断能力が低下している、または親族に任せるのが不安な場合成年後見制度(法定後見制度) が選択肢となります。

  • 元気なうちに、信頼できる家族に財産管理を託したい、かつ身上監護も任せたい場合任意後見制度 が有効です。

  • 財産管理のルールを細かく決めたい、相続対策も兼ねたい、身上監護までは任せない場合家族信託 が有力な選択肢となります。

まとめ:早めの準備が、ご本人とご家族の安心につながる

認知症になった場合の財産管理は、ご本人の尊厳を守り、財産を適切に保全するために非常に重要です。

「まだ元気だから大丈夫」と思っているうちに、専門家(弁護士、司法書士、FPなど)に相談し、ご自身の状況に合った方法を検討しておくことが、将来の大きな安心につながります。

ご家族ともよく話し合い、早い段階から準備を進めていきましょう。

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