持ち家があっても生活保護は受けられる?知っておきたい条件と持ち家の扱いを解説
「生活が本当に苦しい…でも、持ち家があるから生活保護なんて受けられないだろうな」
もしあなたが今、そんな風に考えているとしたら、少し立ち止まって考えてみてください。確かに、生活保護は原則として利用できる資産を全て活用することが前提となる制度です。しかし、持ち家があるからといって、必ずしも生活保護を受けられないわけではありません。
この記事では、持ち家と生活保護の関係について、制度の基本的な考え方から、持ち家があっても生活保護を受けられる「例外」の条件、そしてその場合の注意点までを分かりやすく解説します。
生活保護の基本的な考え方~資産との関係~
生活保護は、憲法で定められた「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するための制度です。生活に困窮してしまった方が、国が定めた基準(最低生活費)よりも収入が少なく、あらゆる手立てを尽くしてもなお生活を維持できない場合に利用できます。
生活保護を申請する際には、預貯金や土地、家屋(持ち家)、自動車、貴金属など、持っている全ての「資産」について申告する必要があります。これは、生活保護が「最後のセーフティネット」であり、まずはご自身の資産や能力を活用していただくことが前提となっているためです。
原則として、生活のために活用できる資産は、売却するなどしてお金に変え、生活費に充てることが求められます。
持ち家と生活保護:原則と「居住用財産」の特例
この「資産を活用する」という原則からすれば、持ち家も資産の一つとして、本来であれば売却して生活費に充てることが求められることになります。
しかし、生活保護制度では、例外として、現在お住まいの持ち家(居住用財産)については、一定の条件を満たせば、すぐに売却することなく保有が認められるという特例が設けられています。
これは、住み慣れた家を失うことが生活の安定にとって大きな影響を与えることや、すぐに売却することが難しい場合があることなどを考慮したものです。
つまり、「持ち家があるから絶対に生活保護は受けられない」ということはなく、条件次第では持ち家を保有したまま生活保護を受けられる可能性があるのです。
持ち家を保有したまま生活保護を受けられる「一定の条件」とは?
では、どのような条件を満たせば、居住用財産として持ち家の保有が認められるのでしょうか。具体的な判断は、お住まいの地域を管轄する福祉事務所が行いますが、一般的には以下のような点が考慮されます。
- 売却しても、その後の生活が困難になる場合: 持ち家を売却しても多額の現金にならない、あるいは売却後の家賃や引越し費用などを考えると、かえって生活が不安定になる、といったケースです。不動産の価値が著しく低い場合などもこれに該当します。
- 住み続けることがやむを得ないと認められる特別な事情がある場合: 高齢である、病気や障がいがあるなど、世帯の状況から見て、住み慣れた家を離れることが心身にとって大きな負担となる場合などが考慮されます。
- 持ち家の規模や構造: 豪邸や広すぎる土地など、生活の維持に必要不可欠とは言えない規模や構造の持ち家ではないこと。一般的な居住用財産であると認められることが前提です。
- 住宅ローンの状況: これが非常に重要なポイントです。 持ち家に住宅ローンが残っている場合、原則として生活保護費からローンの返済に充てることは認められません。ローンの残高が多く、生活保護を受けながら返済を続けることが現実的に難しい場合は、持ち家の保有が認められない可能性が高くなります。ローンを完済している、あるいは残高がごくわずかである、といった状況の方が、持ち家を保有できる可能性は高まります。
これらの条件はあくまで一般的な目安であり、個々の状況によって判断は異なります。
持ち家を保有したまま生活保護を受ける場合の手続きと注意点
もし持ち家を保有したまま生活保護の受給を検討する場合、以下の点に注意が必要です。
- まずは福祉事務所に相談: 何よりもまず、お住まいの市区町村にある福祉事務所に相談に行くことが重要です。持ち家の状況(広さ、築年数、ローン残高など)を含め、現在の生活状況や困っていることを正直に伝えましょう。担当のケースワーカーが、あなたの状況に合わせて丁寧に説明し、アドバイスをしてくれます。
- 資産状況の正確な申告: 持ち家を含む、全ての資産(預貯金、保険、自動車など)について、正確に申告する必要があります。
- 持ち家の維持費用は自己負担: 持ち家を保有できた場合でも、持ち主であることに変わりはありません。固定資産税や、修繕が必要になった場合の費用などは、生活保護費の中からやりくりして支払う必要があります。生活保護費とは別に、これらの費用が支給されるわけではありません。
- 扶養義務者の調査: 持ち家の有無に関わらず、生活保護を申請すると、原則として扶養義務者(親、子、兄弟姉妹など)に援助してもらうことが可能かどうかの調査が行われます。
持ち家があっても生活保護を検討すべき状況
持ち家があるからと諦めず、生活保護の利用を検討すべき状況は以下のような場合です。
- 病気や怪我、会社の倒産や解雇などにより、働き口を失い、収入が途絶えてしまった。
- 長引く不況や物価高騰により、収入だけでは最低限の生活費(食費、光熱費、医療費など)にも事欠く状況になってしまった。
- 預貯金やその他の資産も全て使い果たしてしまい、これ以上ご自身の力だけでは生活を維持できない。
このような状況に陥った場合、持ち家があるからといって一人で苦しむ必要はありません。まずは福祉事務所に相談し、制度について詳しく聞いてみましょう。
まとめ
持ち家を所有していても、生活保護を受けられる可能性はあります。特に、現在お住まいの家(居住用財産)については、売却してもその後の生活が困難になる、特別な事情がある、住宅ローンが残っていない(またはごくわずかである)といった一定の条件を満たせば、例外的に保有が認められる場合があります。
しかし、これはあくまで例外であり、原則は資産の活用が求められる制度であることも理解しておく必要があります。住宅ローンが多額に残っている場合は、持ち家を保有したまま生活保護を受けることは難しいことが多いです。
もしあなたが今、生活に困窮しており、生活保護の利用を考えているのであれば、持ち家の有無で決めつけず、まずはお住まいの地域の福祉事務所に相談に行くことが何よりも大切です。ご自身の状況を正直に伝え、専門家の意見を聞いてみてください。一人で悩まず、国の制度を利用することも選択肢の一つとして考えてみましょう。